ロータリー財団月間に寄せて

「ロータリー財団月間に寄せて」    
                 植田ロータリー財団委員長
今年、ロータリー財団は創設100周年を迎えました。記念すべき年に卓話させていただくにあたり、当クラブが推薦したロータリー財団の国際親善奨学生の中で特に素晴らしい活躍をされ、将来を嘱望されておられる土井悠子さんをご紹介したいと思います。
彼女は2007年に奨学生に応募された時、元国連難民高等弁務官の緒方貞子氏(緒方氏は日本初のロータリー財団奨学生だと伺っております。)のような仕事がしたいとおっしゃっておられました。
すでに彼女は様々な紛争地域でのキャリアを積まれ、現在は国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の職員となって、タイ・カンチャナブリ事務所でミャンマーの難民救済援助支援活動をされています。
世界の安全と平和を願いつつ、命の危険も顧みずに難民の方々のために悪戦苦闘されている土井さんの活躍を知って、わがクラブが推薦させていただいたことを誇りに思うとともに、心から声援を送りたいと思います。

*土井悠子様(元国際親善奨学生)からのメール*
箕面千里中央ロータリークラブの皆様
 この度はロータリー財団創立100周年、誠におめでとうございます。
 貴財団は、「世界でよいことをする」ための基金として設立され、ポリオの撲滅や途上国への人道援助等、100年に亘り同ビジョンを実際の支援に繋げられてきたと伺っております。この1世紀の間に、どれほどの方が貴財団を通じて笑顔になられたか、それを想像しますと、非常に素晴らしい財団でいらっしゃるのだと改めて感動する次第です。
 私は、2007年に国際親善奨学生として、貴ロータリークラブより英国エセックス大学に派遣頂きました。同大学にて国際人権法修士を取得した後、国際機関でのインターン、在外公館(ストラスブール総領事館/欧州評議会オブザーバー代表部、イスラエル大使館)及び国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)コソボ事務所勤務を経て、現在はUNHCRタイ・カンチャナブリ事務所にて、ミャンマー難民の支援に携わっております。
 今回、植田豊實ロータリー財団委員長より大変光栄ながらご連絡を頂きまして、簡単ではございますが、現在の仕事について、写真とともにご報告をさせて頂ければと思います。

 現在タイにはミャンマー国境沿いに9つの難民キャンプがあり、計10万人超のミャンマー難民が暮らしています。その大半はカレン族又はカレニー族であり、90年代後半のミャンマー国内の民族紛争を原因として避難した人が多くを占めています。その半数が18歳以下の子供であり、20年以上続く難民キャンプの中で生まれ、教育を受け、外の社会を全く知らない子供達もたくさんいるのが現状です(タイ政府は、難民のキャンプ外へのアクセスを制限しています)。
 UNHCRは難民支援を先導する国連機関として、紛争や迫害によって故郷を追われた難民の保護と難民問題解決に向けた活動を世界中で行っています。その活動内容は、難民発生時の緊急支援から、避難先での難民の権利と尊厳を守るための支援、そして将来的な解決に向けた自立支援と幅広く、各々の活動地域や支援の段階に基づいた活動を行っています。
 現在私が所属するタイ・ミャンマー国境のオペレーションでは、難民キャンプが設立されて20年以上が経つということもあり、難民キャンプ内の人権侵害事案への対応やアドボカシー活動等に加え、難民の将来的な解決策に焦点が当てられています。難民は紛争や迫害によって故郷を逃れてきていますが、我々の究極の目標は彼・彼女らが尊厳と平和をもって生活を再建できるような恒久的な解決策を見つけ出すことです。これまでタイに滞在するミャンマー難民に対する解決策は原則的に第三国定住しかありませんでしたが、昨年10月にミャンマー政府と少数民族との間で停戦合意文書への署名が行われ、またその後の総選挙を通してアウンサンスーチー氏が国家最高顧問に就任したことにより、ミャンマー帰還への道筋も出てきました。帰還は各難民の自主的な意志に基づき行われ、2016年10月末には、20家族(71人)の難民がUNHCR等の支援で帰還を果たしました。今後さらに帰還が進むことが期待されています。
 世界の難民や難民申請者、国内で住居を追われた人の数は推計6530万人に上り、戦後最多を記録しました。その後もシリアや南スーダン等の国から難民となる人々の数は増え続けています。彼・彼女らが一日でも早く安定した生活を送れるよう、そして「故郷」と呼べる場所を手に入れることができるよう、これからもできる限りの努力を続けていきたいと思っています。難民支援は他の人道支援の例にもれず、予期せぬことが多々起こりますが、最終的に難民の方々の笑顔を見ることができたときは本当に嬉しく、人道支援に関わる機会を得たことへの感謝を強く感じています。